'23/2/12発行「賢者オスッテBLアンソロ」に寄稿します

バニー服を着たあんたが悪い【途中まで】

novelラハ光♂(リバ)

※途中までしか書き上がっていません。明日以降、続きを書いて完成させます。
※今日「バニーの日」なのでどうしても上げたかった
※前半部分は去年upした「11/2タイツの日」「11/4いいお尻の日」の再録です

(時系列pach5.4前後)

オレの憧れの英雄は、日によって肌色が締める面積率が異様に高い。

今日もほら、何故か胸元を裂いた布裂れのような物で覆い、擬似的な入れ墨が入った服装で出掛けようとしている。
「あんた、今日もその服で出掛けるのか」
「うん。なんで?」
なんで、と言われると、何故それが嫌だと思うんだろうとふと真剣に考えてしまった。別に女の子でもあるまいし、男が上半身を露出することに関してさして咎められるはずもない。だけど、冒険者にしては白い肌に割れた腹筋、しなやかな背中、くぼんだ鎖骨。どれをとっても魅力的に見えて仕方が無いのは、自分の欲目だろうか。
「いや、ほら。そんなカッコイイ顔したお兄さんがそんな恰好で街を歩いていたら、ナンパされないのかなと心配に思ってさ」
「ナンパ?」
きょとん、と見返してくる瞳は、ナンパの意味をちっともわかっていない様子だった。この冒険者は人との接触を必要以上に避けてきたせいか俗世に疎く、こと恋愛に関してはからっきしだった。まあ、その、今は、自分と恋人関係にあるわけだけれども……。
「女の子に言い寄られて、困らないのかなって」
「あー……、あれって、ナンパって言うんだね」
「はぁ?」
ちょっと怒気を強めた言葉で返すと、フィルは眉をひそめ、何故怒るのかわからないといった表情でこちらを見つめてきた。されてんじゃん、ナンパ。そりゃあそう、だってどう見ても格好いいし……。グ・ラハは思考が堂々巡りになっていることにやっと気がついた。
女の子に言い寄られている冒険者を、グ・ラハは想像してみた。誘いの言葉に、おそらく無表情のまま、「なんで」とか「この後予定があるから無理」とかそんな感じだろうなと思った。大丈夫、きっと冒険者は女の子になどなびかない。
(ん、大丈夫って、何だ?)
グ・ラハはなんだか異様にモヤモヤとしている自分の感情を言葉に表すことが出来ず、渋い顔で冒険者を眺めた。
「声かけてきた女の子に、ほいほいついて行ったりしてんじゃないだろうな」
「そんな、人聞きの悪い。一応、僕も、れっきとした大人なんだけど」
「身体だけはな」
む、と口元をへの字に曲げて、冒険者はグ・ラハの近くへとやってくる。グ・ラハよりも少し背の高い冒険者が間近でじっと見下ろすと、ぽんぽんと頭を諭すようにそっと叩いてきた。
「二人でお話ししましょうって言われた。だから僕は、ラハに早く会いに帰りたいからごめんって答えた。あってる?」
「……あってるよ」
「そう、それは良かった」
ふわりと後頭部を包み込まれ、裂いた布を巻いただけの胸元にそっと抱き寄せられた。
なんだよ、その返答の仕方は、と思う。フィルは嘘をつかない。
好きとか愛が未だによく理解できていないらしいのでその言葉を口にすることは滅多にないが、会いたいから素直に会いたいと言うし、触りたいから触れる。きっと愛おしいと感じてくれたから、こうして抱きしめてくれるのであろう。
彼の感情は、複雑に見えて実はシンプルだ。
抱き留められた居心地の良さに、グ・ラハはそっと冒険者の背中に腕を回した。先程まで一緒に同じベッドで寝ていたというのに、どうしてまた離したくないと思ってしまうのだろう。きっとそれだって、シンプルに考えられたらどれほど楽なのにと思った。
触れたいから触れあって、離したくないから傍にいる。
その肌を、知っているのは自分だけでありたいし、彼にもそう思ってもらいたい。
「行かなくちゃ」
「ああ、そうだね、ごめん」
「いいんだ、うん。そうだ、そのお姉さんがね」
また、何を言い出すんだこの人はと思った矢先、フィルは耳を疑うようなことを口にした。
「そんなに急いで帰って会いたい恋人がいるなら、今度、とっておきのプレゼントが買える店に案内してあげるわって言われた。ええと、なんだっけ、バニー服のタイツが、……どうとか、なんとか」

◇  ◇  ◇

久しぶりに「今日はどこにも出掛けないよ」とフィルが言うので、グ・ラハは一日かけて彼の荷物整理を手伝うことにした。いや、これは半ば強制的な任務である。
フィルは、荷物整理をしない。いや、出来ないのかもしれない。いつも何かと「あ、持ちきれなかった」と言うので見せてもらったら、なにやら妙な素材がぐちゃぐちゃに、しかも一個とか二個とか半端な数の物達で溢れかえっている。
そんな状態の鞄の中身を、全てカーペットの上に出させて「これはいる? いらない?」とより分けていくのだ。かく言うフィルも、とりわけ物に執着があるわけではないようで、ほとんどの物を「いらない、うん、なんでそんなの入ってたんだろうね」と可笑しそうに小さく笑うのである。あんたが拾ったからだろう、という言葉は敢えて飲み込んで黙々と作業に没頭すれば、ものの一時間しないうちに整理なんてあっという間に終わってしまった。
そして、その荷物の奥底に、「それ」はあった。
しなやかな黒を基調とした手触りの良い布地に、網目状に透けたシフォン……いや、正直に言おう、これはどう見ても網タイツである。
「あんた、これ、本当に買いに行ったのか」
「あ~……」
いつもは是か非かはっきりとした返事しかしないフィルが、その物体を見つけた途端言葉尻を濁した。持ち上げてみると、それはどこからどう見てもバニー服である。しかもご丁寧なことに尻尾穴まで付いていた。ミコッテ用か、いや、アウラ用とも兼用か。いやそんなことはどうでもいい。
「すごく、視線のやり場に困るような店だった」
「そりゃあ、そうだろうな」
「これは、ちょっと、着て欲しいとは言えないなと思って深いところに詰めてたの、忘れてた」
「ふぅん」
流石の冒険者も、バニー服を着て欲しいと言うことに戸惑いがあったようだ。別に、着て欲しいなら着てやるけど? とグ・ラハは思う。でもおそらくフィルのことだから、バニー服がこんなに透け透けの、肌の露出が多い服だとは思わなかったのだろう。
あっ。肌の露出が多い服が好きな人物が、ちょうど目の前にいるじゃないか。
「あんたが着れば?」
「……はぁ?」
すっと伸びる綺麗な眉毛をぎゅっと中心に寄せて、空色の瞳がこちらを凝視している。
「な、なんで」
「だってあんた、肌の露出が少ない服、好きだろ」
「……動きやすいからだよ」
「この服だって、動きやすいかもしれないじゃないか」
フィルが黙って、じいとバニー服を見つめている。見えやすいように、グ・ラハも持ち上げ広げて見せてやった。どうだ、やっぱり無理か……、と諦めかけたその時、冒険者がおずおずと口を開いた。
「着てみるけど、似合わなくても揶揄わないで」
「大丈夫、揶揄わないよ」
え、まじ、着てくれんの。自分から提案したのにもかかわらず、グ・ラハはこれから見ることが出来る冒険者のバニー姿を想像し、心をぴょんぴょんと飛び跳ねさせた。

恥ずかしいからあんまりじろじろ見ないでと言われたので、「フィルが後ろを向けばいいじゃないか」と提案した。
前からも、後ろからだって、どこから見ても綺麗な冒険者の身体を見るのが、グ・ラハはとても好きだった。

羽根のように浮いた肩甲骨。
すっとまっすぐ、一筋の線が通った背筋。
筋肉に挟まれ、くびれた腰。
ふわふわの、綿菓子みたいに可愛い尻尾。

そして、うっすらとえくぼが入る平たいお尻。

あ、昨日その尻にかじりついてやった痕が、淡く花開いている。
グ・ラハは冒険者のあの鋭い牙に甘く噛まれるのがお気に入りで、ついつい「噛んで」と言うものだから、冒険者もそれをマネして「か、噛んでもいいよ」と言うようになった。それで性感を感じてくれているのかは不明である。不明ではあるが、噛まれる瞬間に小さく「ぁ」と漏らす吐息混じりの声が、グ・ラハはとても好きだった。だから噛む。噛んでいいよと許可の言葉を待たずして、衝動のままに噛みつくことだってある。
そのグ・ラハが冒険者に付けた痕を、網タイツが覆っていく。そうするともう、よく目をこらさねばわからないほどに、痕は隠されてしまった。
尻尾穴に白い綿毛のような尻尾が通されると、白と黒のコントラストが相まってすらりと縦に伸びる美脚が生み出された。他のパーツも装着し、後ろ姿から見ても、それは紛れもなくバニー服であった。
すごい、夢みたい。憧れの英雄が、バニー服を着ている。
後ろ姿だけ見ても大興奮なのに、前から見たらこの興奮がこれ以上どうなってしまうのかわからない自分が怖い。
「これ、あってる……? 窮屈、なんだけど」
窮屈……になっている部分が容易に想像できて、グ・ラハは沸騰寸前だ。ぼふっ、と尻尾を膨らませ、「ちょ、ちょっと待って、まだ振り向かないでくれっ」と余裕のない言葉を投げかけた。
まるで訳がわかっていないフィルが「え、なに、何か変?」と不安げな声を漏らすので、「いいから」となだめ、必死に心を落ち着かせようと俯き深呼吸をしていた矢先、ふと視界が暗くなった。
「ラハ、大丈夫?」
しゃがんで心配そうにグ・ラハを覗き込む、バニー姿の冒険者の姿がそこにはあった。

「オレは、振り向くなって忠告したからな」

「ちょっと、ちょっとまって、な」
なに、という言葉を待たずして押し倒されたフィルは、どすん、と鈍い音を立て尻餅をついた。馬乗りになって上から覆い被さるラハの、サンシーカー特有の細い瞳孔が僅かに散大している。するり、と腹部の布の切れ目に手を差し入れて、上に行こうか下に行こうか、何やら迷っている掌があまりにも窮屈で心許ない小さな三角形の中に忍び込んだ。
「こんな、無防備な格好を毎日してる自覚あんの」
ラハの言わんとしていることがよくわからず、「この服着るのは初めてだけど、なに、ちょっと、さ、触り方っ」と手を押し戻そうと抵抗するも、「そういうこと、言ってるんじゃない」と一蹴され、噛みつくようなキスに飲み込まれた。
わからないから、わからないなりに頑張ろうとして、キスされている間もその残酷な赤を見続けていた。揺らぐ赤のその先に、興奮と、ちょっとした怒りみたいなのを感じて、どうしてそんなに怒らせてしまったのだろうと悲しくなる。
ラハに、嫌われるのはどうしても嫌だ。
この人をもう一度失うことも、この手を離さなければならないことが起こってしまうことも、想像しただけで本当に悲しかった。
だから、ラハだけは自分を嫌いにならないで欲しい。
悲しみからか、どんなに刺激されても反応を示さない股間に苛立ったのか、ラハが苛立ちのまま「なんでだよ」と口を離してそう言った。
「ラハを、怒らせてしまったと思って悲しい」
「はぁ?」
「嫌いにならないで。なんでもするから」
「……っとに、あんたはびっくりするほど話が飛躍するよな」
今度は優しく、まるでおやすみのキスみたいにふんわりと。それは水晶公が、最初に教えてくれたキスに似ていた。
「こういう服……バニー服じゃなくたって、あんたの肌をこうやっていやらしい目で見てるのは、オレだけだと思わないで」
ちょん、ちょんと、顔中にキスを振りまいて、「な、わかった?」と言われても、結局どうして欲しいのかがわからず、フィルは疑問符を頭の上に浮かばせた。
「もっと、簡単に言って」
ぐ、とラハは言葉に詰まり、小難しい顔をしてはぽりぽりと頬を掻いた。
「ここも、ここも……」
ラハが指でそろそろと肌をなぞる。
肩、鎖骨、胸を辿って腹筋に、ぐるりと巡って背中まで。
そうしてようやくたどり着いたのは口の中。ラハが特に好んで触る、ムーンキーパー特有の、牙。
「全部、オレの中に閉じ込めたい。だからあんまり、人に見せないで……。わかった?」
ああそうか、だからあんなに肌の露出を嫌がっていたのか。やっと話の合点がいったのに、今度は口の中を執拗に指で弄るラハのせいで「わかった」と言葉を紡ぐことが出来ない。
はっ、はっ、と閉じることが出来ない口から呼吸をすれば、ラハの指に唾液が垂れていく。
「ああ……、あんた自分でわかってる? 今、すごいことになってんだけど」
ほら、と言ってまだ下着の中に入っていた手をゆっくりと動かされると、ようやくラハが言ってる意味を理解した。小さな布地を押し上げた、自分の股間。
窮屈な三角が、更に窮屈になっている。

「あんたさっき、何でもするって言ったよな?」
小さくも、獰猛な恋人がそう言うのを、閉じきらない喉奥をこくりと流し、「言ってない」とフィルはバレバレな嘘をついた。

「この服は、もう着ないよな?」
「ん、もう着ない」
「そっか……、じゃあ、破いてもいい?」
「えっ」
いいかどうかの返事を待つことなく、グ・ラハは小さい黒三角の脇をビリリと引き裂いた。三角のてっぺんを押し上げている彼の陰茎は今にもその布地から飛び出さんとしていたが、辛うじてまだ収まっている。まあ、この後顔を出してしまうのも時間の問題だろう。
「こういう服は、頼まれても着ちゃダメだぞ、わかったか?」
「わかっ……、ちょっと、ラハ、何して」
「ん、何って、自分のことを良くわかってない誰かさんに、お仕置き」
欲望のまま床の上で組み敷いた身体を反転させて、小さい裂け目に指を這わせる。窮屈な布地の中は興奮からか蒸れていた。彼の白い尻尾の上に、ちょこんと擬似的なウサギの尻尾がついている。四つん這いを余儀なくされたフィルが、不安と期待の入り交じった様子で尻尾を震わせると、まるで女の子の髪飾りのようなウサギの尻尾がフルルと揺れた。
「や、おかしいっ、やだっ……脱がせてっ」
「あんたの立派な尻尾の上に尻尾がもうひとつあって、可愛らしいな?」
「やだ、ちょっと、ラハ、待っ……」
「待たない」
モードゥナのアパルトメントは室内がそこまで広くはなくて、大概の物が手を伸ばせば届くから丁度いい。いつも使っている潤滑油を手に取って、黒い三角から裂け目にかけてとろりとこぼしてやる。油を吸った黒が更にぬらぬらと卑猥な色を呈していて、秘されたその下にある蕾を想像しては生唾を嚥下する。服を着たまま行為を致すということ自体珍しく、しかもこの、コスプレ紛いのバニー服は背部から見下ろしても絶景だ。
タイツの裂け目から指を差し込む。グ・ラハは見えない蕾の入り口を探り当て、わからせるように擽った。このまま、この服を着たまま、ここに挿れられてしまうんだよ、と。
中指の指先を、くぷんと潜り込ませた。小さく「あっ」と悲鳴を漏らしたフィルが、声を堪えるように身を縮める。まだ彼は、受け入れる行為になれていない。だから自分が、『そういう』対象として見られているということを、認識できないでいる。
その純粋さが可愛らしくて、無防備で、そして危うい。
フィルが頑なに息を潜めるものだから、指が行き来する度に卑猥な音が室内に響き渡る。くちゅ、くちゅ。ちゅぷん、と一度引き抜いて、今度は指を二本に増やす。
「そんなに身体を硬くしてたら、入るものも入らないぞ」
「ん、だって……ん、んんっ」
こじ開けるように二本に増やした指先を小刻みに揺らしながら、硬い筋肉を弛緩させるため、もう片方の指先で露呈した肌を産毛を逆撫でるように滑らせた。布による防護が全くない腰を辿り、開いた脇の下へ。さすがに擽ったいのか身を捩るフィルが「ちょ、……もうっ、だめだっ……ん、ふふっ」と笑い始めたのを契機に、指先を更に奥深くへと侵入させた。
「やっ、も……やだったら、こんな、おかしっ……だめ、声、でちゃうか、ら」
「聞かせて欲しいって、いつも言ってるだろう?」
「こんな、可愛くない声、だめだっ……て」
「オレが可愛いって言ってるんだから、可愛いんだよ。ほら、上手にオレの指も食べられるようになってきた」
「やっ……、も、脇、やっ‼」
フィルが喘ぎ声を堪えて口を噤もうとする度に、悪戯に肌を擽る。ビクビクと、指を上手に咥えこみながら震える姿はまるでウサギそのものだった。頭上の白くて長いバニーの耳も、フィル自身の耳も、ぷるぷると連動するように震えている。
もっと、もっとだ。彼が気持ちよさで泣きじゃくる声が聞きたい。
だがグ・ラハはいつも、彼を組み敷きその中に挿れると無我夢中になってしまい、結局鳴かせるということは二の次になってしまう。しかも今日はバニー服。すでに自分の雄も痛いくらいに張り詰めていて、まだ充分にほぐれていないそこに入れるには自分のことながら凶悪すぎる。
「フィル、もうちょっと破くな」
ビリリと更にタイツを破ると、フィルの白い太腿が露呈する。流石に堪えきれなくなった黒三角からフィルの陰嚢と陰茎がぷるんと飛び出して、後ろから見れば卑猥極まりない。
「ほら、足、閉じて。ん、上手」
「な、に……? な、や、また指」
「お尻、突き出すようにして……、そう、偉いぞ」
「なに、やっ……、これ、何⁉」
「素股」
「わかんなっ、あっ、ラハの、熱いっ」
フィルの尻孔に指を突っ込みながら、閉じた太腿の合間に己の陰茎を差し込んで腰を打ち付ける。

(続きはまた明日!)